子育て世代にとって、お手頃で使い勝手が良いファミリーカーとして近年注目されている「スーパーハイト軽ワゴン」。頭上空間を含めた広大なスペース、扱いやすい装備など、実用車として多彩な魅力を備えていますが、本記事ではさらに使いこなしたい・着目したいポイントをご紹介します。
2019年、一番売れた軽自動車は…
一般社団法人 全国軽自動車協会連合会の調べによると、2019年1月から12月までの軽四輪車「通称名(モデル名)別新車販売」データでランキングトップに輝いたのは「ホンダN-BOX」でした。第2位は「ダイハツ・タント」、第3位は「スズキ・スペーシア」……と、年間セールス上位3台を占め他のが、「スーパーハイト軽ワゴン」と呼ばれるジャンルに属するモデルです。
◼2019年1〜12月 軽四輪車 乗用車ベスト5(一般社団法人 全国軽自動車協会連合 調べ) | |||||
順位 | メーカー | 通称名 | 本年累計 | 前年累計 | 前年累計比 |
1 | ホンダ | N-BOX | 253500 | 241870 | 104.8 |
2 | ダイハツ | タント | 175292 | 136558 | 128.4 |
3 | スズキ | スペーシア | 166389 | 152104 | 109.4 |
4 | 日産 | デイズ | 157439 | 141495 | 111.3 |
5 | ダイハツ | ムーヴ | 122835 | 135896 | 90.4 |
そんな激選区にある車種ですが、果たして今、どのポイントに注目してマイカーを選ぶべきでしょうか。2019年7月にフルモデルチェンジを果たして以来、好調なセールスを展開したことで前年の年間販売台数から28%増を記録しているダイハツ・タントと、5年連続で同ジャンルのナンバー1カーに輝いたホンダN-BOXを比較しながら、スーパーハイト軽ワゴン選びのポイントを研究しました。
毎日の安心感に大きく差がつく。こだわりの先進安全運転支援装備

出典:ダイハツ「タント」
新型ダイハツ・タントは2019年12月、デビューからわずか半年ほどでラインナップに「セレクションシリーズ」と呼ばれるグレードを追加設定しました。7月のフルモデルチェンジ以来、目標販売台数を大幅にクリアする好調ぶりをアピールしていた中での大きな動きでしたが、お買い得感はさらにアップしています。
セレクションシリーズはもともとパッケージオプションとして用意されていた「コンフォータブルパック」「スマートクルーズパック」「スタイルパック」の3つを、それぞれ約4万から5万円くらいお得な価格設定で標準装備したもの。とくに注目されるのはいわゆる先進安全運転支援装備の標準装備化です。
これまでタントでは、全車速追従機能付きACC(アダプティブクールズコントロール)とレーンキープコントロール(LKC)が、「スマートクルーズパック」としてセットオプションの中に設定されていました。今回その装備が、XターボとカスタムRSのターボモデル2車種に“セレクション”として標準装備化されています。実はこのふたつの装備の標準化は、ライバルでありジャンルトップの実力者であるホンダN-BOXに追従するもの。N-BOXではACCも車線維持システム(LKAS)も「Honda SENSING」として全グレードに標準設定されています。ちなみに“セレクション”シリーズは、他のグレードではオプション設定される運転席シートリフターとチルトステアリングも標準装備化。運転する機会が多い場合は、迷わず選ぶべきではないでしょうか。
長距離ドライブが好きな方には”ターボ系”がオススメ

出典:ホンダ「N-BOX」
タントの場合はACCもLKSも、ターボモデルのみの設定になるのが残念なポイント。そのため長距離走行を頻繁に行う場合には、エンジンパワーにもゆとりのあるターボモデルの“セレクション”を選ぶのがベストでしょう。
対照的に、街乗り中心でほとんど高速道路を使わないと言う方であれば、ターボのつかないNAモデルの選択がベスト。ほとんどのグレードに標準装備されるスマートアシストのフォローで、十分安全性を確保することができます。衝突時の被害を軽減するブレーキシステムも一部を除く全グレードに設定されます。
スマートアシストの基本機能そのものは、N-BOXのHonda SENSINGとほぼ同じ。ただしHonda SENSINGは、ブレーキ支援やステアリング操作を車が行う、路外逸脱抑制機能や歩行者事故軽減ステアリングといった「お助け系サポート」がより充実している印象があります。
ダイハツ「スマートアシスト」×ホンダ「Honda SENSING」基本機能比較
スマートアシスト | Honda SENSING | |
衝突回避支援ブレーキ機能(対車両・対歩行者) | ● | ● |
衝突警報機能(対車両・対歩行者) | ● | ー |
車線逸脱警報機能 | ● | ● |
路外逸脱抑制機能 | ー | ● |
ブレーキ制御付誤発進抑制機能(前方・後方) | ● | ● |
先行車発進お知らせ機能 | ● | ● |
オートハイビーム | ● | ● |
ADB(アダプティブドライビングビーム) | カスタムRSのみ | ー |
コーナーセンサー(フロント2個/リア2個) | ● | ー |
標識認識機能 | 進入禁止 | 進入禁止、一時停止、速度規制 |
歩行者事故軽減ステアリング | ー | ● |
※機能名はダイハツの呼び名。ホンダでは一部異なります。
スーパーハイト軽ワゴンならではの「便利な装備」も外せない。
背の高さを生かした上下方向の室内のゆとりは、スーパーハイト軽ワゴンならではの最大の魅力です。
そしてそれを生かすのが、リアドアのパワースライド機構です。新型タントでは、右側は全車が標準装備。カスタム系では左側もパワースライドタイプとなります。標準仕様ではオプション設定です。N-BOXではターボモデルが左右ともにパワースライド機構付に。NAモデルは右側のみが標準、左側はオプション設定となっています。
タントのリアドアはミラクルオープンドア。左側リアドアを開けるとBピラーがありません。この開口部の広さは、人の乗り降りはもちろん嵩張る荷物を積む時にも本当に便利です。さらに軽自動車としては初めての機能も満載。手を触れるだけで施錠できるタッチ&ゴーロック機能に加え、手を触れる必要がなく車に近づくだけでドアが自動で開く動作をあらかじめ予約しておける、ウェルカムオープン機能まで装備されています。
また、広いスペースを生かしたシートアレンジの多様性も、このジャンルを選ぶ大切なポイントの一つ。新型タントでは、運転席、助手席、後席に至るまで、圧倒的なスライド量で快適性や使い勝手を高める工夫を追求しています。
N-BOXは助手席側のスライド量を570mmも確保(スーパースライドシート車)。さらにリアシートの座面をポップアップすることが可能。これは、N-BOXならではの便利機能と言えるでしょう。人が乗る時には足元を広く、荷物を積む時にはより無駄なくスペースを使うことができます。
まとめ
安全装備と便利機能にはメーカーや作り手の車作りに関する哲学を感じ取ることができます。
タントの場合は、ロングラン向けと街乗り向けで割り切ったグレード設定や装備展開が徹底されているのが特徴。比較的まんべんなく装備が充実しているN-BOXに比べると、グレードごとのキャラクターの違いがはっきりしている印象です。全般的にN-BOXよりもリーズナブルな価格設定など、コストパフォーマンスにこだわりながら、車を使う目的やライフスタイルに合わせたグレードを選びやすいラインナップ、と言えるでしょう。