クルマを運転していると、ヘッドランプやテールランプ、ハザードランプに室内照明など、さまざまな「光」を使います。それはただ道路を明るく照らし出すだけでなく、多様な形で安全性の向上に寄与しているのです。今回は車に搭載された光にまつわる最新技術やトレンドをお伝えしつつ、ドライブ中に一般化されている光を介したコミュニケーション術の必要性や光の活用によって期待できる効果をご紹介します。
最新技術編①進化するヘッドランプ
今まで、自動車は常時ロービームのままで走ることが一般的だと考えられていましたが、昨今では、夜間の安全性を向上させるためには、積極的にハイビームを使うべきだという考えが広まりつつあります。
通常のロービームは約40m先までの視界を確保する光量と配光に調整されていますが、一般道であっても不意の危険回避が行える視認性確保に、十分だとは言い難いもの。しかしハイビームの照射距離は約100mで、前走車や対向車のドライバーにとっては眩しくて視界を妨げる可能性が高く、こちらを常用することも難しいと考えられていました。小まめにハイローを切り替えて利用すればいいのですが、それはそれでドライバーにとっては煩わしいものです。
そうした煩わしさからドライバーを解放してくれるのが、自動ハイビームと呼ばれるシステムです。トヨタの場合、「オートマチックハイビーム」と呼ばれる機能がアクアからアルファード/ヴェルファイアまで、幅広い車種に設定されています。この機能は通常時はハイビームで走行し、先行車や対向車の光を感知すると自動的にロービームへと切り替えてくれます。
さらに欧州メーカーを皮切りに、国内勢でもマツダなどがLEDヘッドランプを使ってより緻密な配光制御を行えるシステムを実用化しています。これは単にローとハイを切り替えるのではなく、光の照射範囲そのものを部分的に遮ることで眩しさを回避する発想です。メカニズムの方式には2タイプあり、ひとつがヘッドライトの中に可動式のシェード(遮光板)を設定し、それを部分的に開閉するもの。もうひとつがLEDの点灯数を状況に合わせて増減して、文字通り「光が届かない」エリアを作り出すものです。
マツダが積極的に取り組んでいるALH(アダプティブLEDヘッドライト)は、後者の技術を採用。約40km/h以上での走行時に4つのブロックに分かれて配置されたLEDユニットを点滅させることで、視界をしっかり確保しながら眩しさを感じないですむヘッドランプを実現しています。
最新技術編②LED化の恩恵はテールランプにもあり!
ヘッドライトをLED化することは、照射範囲を拡大できるといったメリットも持ち合わせています。ヘッドライトの変化とあわせて、リアのテールランプのLED化も急速に浸透しているようです。いわゆる従来の電球タイプに比べると光の配光がとてもユニークで、しかもくっきりとした奥行き感と先進性に富んだ後ろ姿の表情を演出できるなど、はじめはこれらの優れたデザイン性によってLEDテールランプが注目されていました。
しかし最近、各社のニューモデルがこぞってLEDテールランプを使う理由は、もうひとつあります。それはコストパフォーマンスに優れているということです。消費電力を大幅に抑えられるとともに、長寿命によって交換時期の間隔がより長くなる可能性が見込めるのもテールランプLED化の大きなメリットです。
また、光ったり消えたりする時の応答速度が抜群に速いのも大きな特徴だと言えるでしょう。市街地走行でもコンマ数秒で数m進んでしまう車にとって、一瞬でも素早く前走車のブレーキングを認識できることは、事故を防ぐためにも大きな効果です。テールランプ同様、ウインカーもLEDタイプが増えており、こちらはシーケンシャル式と呼ばれる「光が流れる」アレンジが、ファッション性と実用性の両方を高めてくれるデバイスとして注目されています。
最新トレンド編①デイタイムランニングライトが一般化?
本来ライトは暗い夜道を照らし出すための装備と考えられてきましたが、ヨーロッパでは早くから、自車の存在をいち早く周囲に察知してもらうためのツールとしても重視されていました。昼間もしっかり点灯させる「光」……それは「デイタイムランニングライト」と呼ばれています。
欧州車では、ライトのモードを「Auto」に設定すると、スモールランプ部がより強めに発光して存在感をしっかりアピールします。国産車の中でも、最近は昼間から鮮やかな明かりを見せつけているクルマが目につくようになりました。進化した安全性に関するカルチャーは、日本国内でも少しずつ普及しつつあるようです。国産自動車メーカーでは、トヨタのほかホンダやマツダが、積極的に導入しており、仕様は欧州仕様と少し異なるものの、今後も搭載車は着実に増え続けることが予想されます。
最新トレンド編②サンキューハザードってなに?
高速道路の合流時に車間を長めに空けてもらったり、車線変更時に譲ってもらったり、思いやり運転に助けてもらったドライバーは、決して少なくないはず。そんなシーンに遭遇した時は、口頭で伝えることはできなくてもお礼の気持ちを表現したいもの。かつてはクラクションを鳴らすなどしてそうしたお礼の気持ちを伝えていましたが、周りからすると音がうるさく感じられ、鳴らし方によっては逆に煽っているかのようにも聞こえてしまいます。そんな時に便利なのが、「サンキューハザード」と呼ばれるマナーです。
これは、列に入れてもらったり譲ってもらったりしたら2〜3回ハザードランプを点滅させるだけ、というとっても簡単でシンプルな方法です。これだけで、互いの気持ちに余裕ができてしまうから不思議なものですよね。ドライバー同士の密なコミュニケーションは、事故を大幅に減らしてくれる非常に重要な手段です。相手を思いやる運転=優しくて安全な運転は、まずはそれぞれの意思疎通を徹底することから始まるのではないでしょうか。
光は賢く利用しよう
光を使ったコミュニケーションといえば、パッシングがごく一般的です。けれど実は同じパッシングでも、地方によって微妙に意味合いが異なると言います。地域や受け取り方によっては、「お先にどうぞ」と「先に行くから待て」など、まさに真逆の意味合いを兼ね備えることになります。今回ご紹介したものはどれもが自分や家族、そして道路を利用する誰もが安心して走行できるための装備やドライブテクニックの一部です。ぜひ上手く使いこなしてくださいね。