前回は中古車購入初心者さんに向けて、安心感と信頼を優先するなら大手を選びましょうとお伝えましたが、規模は小さくとも優良な中古車をそろえている販売店は世の中にたくさんあります。「相場なり」の価格設定をしている大手販売店と比べると、「お買い得感」や「掘り出し物感」は、後者の方が勝るケースもあるのです。
そこで今回は「中・上級編(※)」として、コスパに優れた中古車を選ぶポイントや注意点について解説します。賢く利用すれば価値ある買い物ができますので、うまく活用してください。
※中古車の購入経験がある方に向けた内容を指します。
それなりの値段だから“状態が良い”とは限らない
同じ中古商品であっても、本・CD・ゲームソフトの場合はたとえパッケージなどに痛みがあっても利用さえできれば購入されます。しかし中古車の場合、外装・内装の汚れなどは一目で状態がわかりますが、エンジンや足回り、電装関係などの健康状態を見極めるのは困難です。そのため、外装が綺麗だから買ったのにすぐに故障してしまったということも生じるのです。
ただ、「安かろう悪かろう」と一概に言うこともできず、数万円で売りに出されていた中古車でも故障やトラブルなく、数年にわたって活躍してくれることもありますし、100万円を超える中古車でも、すぐに故障して廃車を余儀なくされるケースもあります。
中古車販売店に訪れると「この車は程度がいいので○年は乗れます!」というセリフを耳にすることもあるかもしれませんが、数百kmしか走行しておらず、メーカー保証を受けられる年式の車でもない限りは疑うべきだと言えるでしょう。
ここでは一旦、今持っている知識と経験を捨て去り、まっさらの状態で中古車探しを始めていきましょう。次の段落より、コスパの良い中古車を購入するポイントをお伝えしていきます。
ポイント① タイプに特化した専門店を利用する
中古車店には、広大な展示場を完備しあらゆるタイプの車種を並べているところと、以下のように車のタイプに特化した販売店も多くあります。
- 軽自動車・コンパクトカー専門店
- HV・EV車専門店
- ミニバン・ワンボックス車専門店
- SUV・4WD 車専門店
- スポーツカー専門店
- 輸入・高級車専門店
前者は、一気にさまざまなタイプの中古車をチェックできるのがメリットですが、取り扱う種類や台数が増えるほど、一点一点のボディータイプに対する営業マンの知識が希薄になり、整備を担当するメカニックの熟練度も下がることが多いようです。
中古車販売数日本一の座を争う、ビッグモーターやガリバーなどの超大手なら話は別ですが、掘り出し物を探そうと中小販売店を巡るなら、まずは「専門店」に狙いを絞りましょう。専門知識を備えたスタッフが揃いますので質問をしても明確な答えが返ってきますし、優良な中古車に出会える確立がグンと増してきます。すでに購入したい車が決まっているならば、大手販売店だけでなく専門店を訪れてみてくださいね。
ポイント② 地域ごとのニーズを把握する
全国に張り巡らせた販売ネットワークと店舗ごとに在庫車を融通し合える大手中古車チェーンとは異なり、地元に根付いて営業を続ける中小の販売店は、限られたスペースに展示する中古車を厳選し、強化販売しない事には生き残っていけません。
あくまで一般論となりますが、それぞれの地域では
1. 駐車場の確保が難しい都市部・・・一度の大人数が移動できるミニバン&ワンボックス
2. 公共交通インフラの整備が乏しい郊外・・・購入&維持コストの安い軽自動車
3. 山間地や寒冷地・・・悪路走破性の高いSUV&4WD
などの人気が高いことから、地域ニーズにマッチする高品質な中古車を、該当地域の販売店はそろえたがる傾向にあります。あえて通勤ルートや生活範囲ではなく、普段立ち寄ることのない場所の中古車店に足を伸ばしてみると、掘り出しものに出会える確率が高まりますよ。
ポイント③ 乗り潰し用の中古車が欲しいなら…
中古車の購入を検討している方の中には、低年式・過走行気味でボディーに傷やヘコミがあろうと、一定期間のみ乗れればOKという方も多くいます。たとえば、新車購入までのつなぎや普段の足替わり、運転に不慣れな初心者の練習用などです。
「何でもいいから安い中古車はないかな」という判断基準で探す方もいますが、一般的な販売店はそういった中古車を好んで買取査定しないため、意外と簡単に見つけることはできません。一方、修理や板金で利益を上げている街の工場では、顧客から引き取った廃車寸前の車体に手を加えて敷地の片隅でひっそりと直接販売していたり、顧客からの要請に応えるため車検を通過する状態まで修復・部品交換を行ったりして管理していることもあります。
もし、お世話になっている板金・修理工場があれば、直接聞いてみましょう。稀に、中古車市場では考えにくいリーズナブルな価格でゲットできるケースもあります。
中古車を購入する前にチェックすべきこと
ここまでは中古車の購入経験がある方に向けて、よりおトクに購入できるポイントを解説してきました。慣れたユーザーだからこそ注意すべき点もいくつかありますので、最後にご紹介しましょう。
「中古車は値引きできない」はウソ
これは、ある程度、中古車購入に対して予備知識を持っている方が陥りやすい注意点です。新車であれば、交渉によって数万円から数十万円レベルで値引きができるけど、中古車は「一切値引きできない」と思い込んでいる方が非常に多くいます。仕入れ相場が目まぐるしく変わるうえ、販売価格を店舗の独断で決めることができるため、メーカー希望販売額が明確に決まっている新車より、場合によっては値引きしやすいのが中古車なのです。
しつこすぎると煙たがれますが、本体価格はもとより諸費用の値引き交渉をしたり、コンポ・ETC車載器など装備品の追加サービスを求めたりすると、案外あっさり応じてくれることもあるので、ぜひ試してみてください。
事故歴と修復歴との混同
中古車購入時の最も気になるポイントが「事故歴・修復歴の存在」。ひとまとめにしてしまいましたが、この2つは似ているようで全く非なるものです。販売店が購入者へ伝える義務があるのは、骨格にまでダメージがおよび修理を施した「修復歴」であり、それよりダメージの少ない事故を修理した履歴を告知する義務は、法的にも業界の慣習的にもありません。
修復歴にまで至らない事故であっても、程度にもよりますが、後々になって不具合が出てくることもありますので、中古車を購入する際は「この車は、どこか修理箇所がありましたか?」と、担当者に問いただすことも大切です。
水没車かどうかを判断するには
最近、増加の一途をたどる自然災害。とくにゲリラ豪雨による水害は深刻さを増していますが、それに伴い中古車市場へ「水没車」が、以前より多く流入しているようです。水没車は「冠水車」と呼ばれ、水に浸かって動けなくなる状態になった車やボンネットの高さまで冠水しエンジンが停止した車のことを指します。
車内の悪臭やカビ、金属パーツのサビや電装系パーツの不調など、将来的に多くのトラブルを引き起こす可能性があるため、なるべく購入を避けたいところですが、完全に乾くと痕跡が残らなくなることも多く、前述した修復歴や事故歴以上に判別が困難です。
水没車をご自身で見極めることは難しいですが、次の5項目をチェックして1つでも当てはまった場合は、水没車であることを疑いましょう。
- 同レベルの中古車より販売価格が極端に安い
- ヘッドライトの反射鏡が曇っている
- スペアタイヤホイール&工具がさびている
- 車検証・自賠責保険証などが再発行
- 取扱説明書・保証書がないor濡れたためヨレヨレしている
修復歴と異なり、水没車は販売時の表示が義務化されていないため注意が必要です。有名店ではトラブル防止のため仕入れ・販売しないのがほとんどなので、不安な方は大手チェーンに購入先を絞るのも手です。
まとめ
最近の販売店では、流通の透明化・健全化を目的とした非営利団体(JADRIなど)ができて自主規制を推進するなど、以前より洗練され、「価格なり」の中古車を安定して購入できるようになりました。しかし、車は人を乗せて安全に移動するものですので、不具合を発見したり少しでも不安になったりしたら、納得できるまで手続きを進めないようにしましょう。
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