国内では毎年、地震や台風などの自然災害が起こっていますが、世界的な気象状況の変化に伴い、ゲリラ豪雨や竜巻など、これまであまり観測されなかった大規模で突発的な災害が各地で発生することも多くなってきました。
たとえば、走行中、洪水までとは言わずとも急な豪雨に見舞われ、車が冠水道路にはまってしまうこともありえますし、台風接近に伴う強い風を受け運転に危険を感じることもあるかもしれません。そんなとき、ドライバーはどのような対応をすればいいのでしょうか?
地震発生時に取るべき行動とは
テレビやラジオの天気予報などで、事前に情報を入手しやすい台風や豪雨とは異なり、いつ発生するかわからないのが地震です。地震が起きたら、ドライバー自身はもちろんですが他車にも意識を向けなくてはなりません。なぜなら、地震の規模によっては走行時の振動で発生に気が付かず、平気で走行を続ける車もいるため、自分だけ慌てて行動すると2次災害の原因になってしまうかもしれないからです。
地震の発生に気が付いたら、まずは落ち着いてハザードを点灯しましょう。そして、急ブレーキをしないように道路の左側へ、徐々に速度を落としながら停車します。安全な位置に停車できても、すぐに車から降りず、揺れがおさまるまで車内で待機します。
その時はカーラジオから地震規模や道路状況情報を収集しましょう。発生したのが中・小規模の地震で、被害情報がそれほどなく、交通にも影響が出ていないことを確認できれば、安全に留意したうえで運転を再開します。
しかし、地震遭遇地点の震度が5以上と規模が大きく、広範囲への被害が予想されるような大地震の場合は、運転を再開せずにその場に車を「放置」し、車から降りて安全な場所へ避難をしましょう。地震後の救助・消火・緊急搬送の妨げになるようであれば、速やかに移動できるようキーを挿しておく、もしくは目立つ場所においたまま非難をしてください。
この場合、ドアは施錠をせず、すべての窓を閉めた状態で道路以外の場所に駐車することが理想ですが、ドライバーと同乗者の安全確保が第一ですから、道路状況などで難しいときは可能な限り左側に寄せて駐車し、避難するようにしましょう。
豪雨の遭遇時に取るべき行動とは
一言で雨と言っても、1時間あたりの降雨量によって運転への影響は異なり、取るべき行動も変わります。
注意すれば走行可能なレベルの雨
気象用語で「やや強い雨」と表現する10~20mm/hほどの雨の場合は、それほど運転に支障ありません。とはいえ、濡れた路面は普段より滑りやすく、ブレーキを踏んで完全に止まるまでの「制動距離」が伸びてきますので、急なアクセル・ハンドル操作は避け、早めにブレーキをかけることを心がけましょう。
運転に支障が出てくるレベルの雨
運転に大きな影響が出始めるのは、20~30㎜/hの「強い雨」や30~50㎜の「激しい雨」に遭遇した時です。この状態だと、ワイパーを最速にしても視界を確保できず、道路が川のようになってしまう場合もあります。
そんな事態に遭遇したら、車間距離を普段より長めに取り、数回に分けてブレーキを踏む「ポンピングブレーキ」を多用しましょう。また、「激しい雨」が長時間にわたってくると、道路にたまった水がタイヤと路面との間に入りブレーキが効きにくくなってしまうハイドロブレ―ニング現象発生のリスクも高まるため、スピードはかなり控え目にして走行してください。
できれば運転を控えるべきレベルの雨
「非常に激しい雨」や「猛烈な雨」と伝えられる、50mm/h以上の豪雨が予報されていたら、運転はもちろん外出も控えたほうが安全です。とはいえ、突如として猛烈な勢いで降り始めるゲリラ豪雨は、気象庁としてもなかなか正確に発生地点や時間を把握できていません。
特に、80㎜/h以上の勢いで降り出したゲリラ豪雨の場合、視界が全く確保できなくなるため安全な走行はほぼ不可能となります。今のところ、ヘッドライトとハザードを点灯させて意思表示しつつ、道路わきや安全なスペースに停車し豪雨をやり過ごすしか安全を確保する術がありません。
冠水してしまった時の車への影響と対処法
川沿いの道路はもちろん、都市部の高架下などのアンダーパスでは、豪雨に伴い道路が冠水する恐れが高くなります。当然、豪雨発生時やその直後は、冠水した場所の走行を避けるべきですが、万が一冠水道路にはまってしまった場合、冠水の程度に関わらず感電を防ぐため、速やかにエンジンを停止してください。
大抵の車は30cm地点まで冠水するとマフラーに大量の水が流れ込み、エンジンの調子が狂い始めやがて停止します。エンジンが止まっただけならまだましですが、30cmでもドアに強い水圧がかかってくるため、腕力が低い女性や高齢者の場合は自力でドアを開けることすら困難になり、車内に閉じ込められてしまう可能性も出てきます。また、冠水場所によっては40cm、50cmと水深が上がり車内へ雨水が流れ込んで来るケースも考えられますが、決して慌ててはいけません。
雨水が車内に浸水してくると、車内と車外の圧力差が小さくなるため、さっきまでびくともしなかったドアがあっさり開いて、脱出できることもあります。しかしそれでもドアが開かないときは窓ガラスを破壊して外へ脱出してください。万が一に備えて窓ガラス破壊用のハンマーを、車内に常備しておいてもいいでしょう。
どんな方法であれ、無事に車外へ出ることができたら、安全な場所まで避難をしてください。冠水時には道路のマンホールの蓋が、水圧で開いてしまっていることもあるため、傘などで路面の状況を確認しながら、落ち着いて移動するようにしましょう。
台風・強風遭遇時に取るべき行動とは
強風と言えば、夏〜秋にかけてやってくる台風を思い浮かべるかもしれませんが、現在では気象学上の「強風」とされる風速10m/sの発生日は夏場より春の方が多くなっています。
風速10~15m/s
運転に影響が出始める風速で、横風にハンドルが取られやすくなってきます。
風速15~20m/s
横触れはさらに強まり、看板やトタン屋根などが飛ばされ道路上に飛散しているケースも。このレベルまでは、気象情報的に強風注意報として伝えられますが、強風で車体が横転するようなことはほぼありませんし、万全の注意を払っていれば走行を続けることも不可能ではありません。
風速20m/s以上
通常の速度で走行するのは困難となり、飛来物が車体に激突する危険も高くなります。そのため、天気予報で「暴風警報」並びに「暴風特別警報」として伝えられている時は、運転を控えた方が良いでしょう。
また、走行中に車体が30m/sを超える「猛烈な風」を受けると、横滑りによる事故や横転事故発生のリスクが急激に高まるだけではなく、車外に出て非難することすら困難になります。この場合、外出は控えた方が安全です。
肝心なのは、気象庁が発表する強風に対する注意報・警報は、いずれも1日を通しての「平均風速」を基準にしたものであり、瞬間的な最高風速を基準にしたものではないことを知っておくことです。瞬間風速は、場合によって平均風速の1,5~3倍近くに達することもありますし、注意報や警報が出されていなくとも、それに相当する瞬間的な強風が走行中の車に襲い掛かってくることもあります。常に、時速数十km走行する車体への影響は図り知れませんが、目で見える雨と異なり相手は見えない風なので、身構えることすらできません。
つまり、強風への備えは天気予報のチェックと共に、以下でお伝えする「瞬間的に強風が発生しやすいポイント」をルートから外したり、ハンドルを強く握りなおす、速度を落とす、車間距離を長くするなど、突風に対応できる行動をとりましょう。
- 横風が吹き抜けやすいポイント・・・トンネルを抜ける地点、海外沿い、高速道路の遮音壁切れ間など。
- 風が集約し強まりやすいポイント・・・山間部や盆地、ビルの谷間、トンネル入り口付近など。
- 風を遮るものがないポイント・・・橋の上、広い田園地帯、大型河川の土手の上など。
まとめ
アウトドア向けのRVや4WDなどは、地震に伴い環境が悪化した道路や、冠水道路の走破性能に優れていますし、車高のあるミニバン車種の天井は冠水道路に立ち往生した際の一時避難場所になり得ます。一方、こういった車種は横風の影響を非常に受けやすいため、強風時の横触れが激しく、横転のリスクが高まってきますが、反対に車高の低いスポーツ車種やセダンなどは、強風による影響が少なくなります。
ライフスタイルだけではなく、住んでいる地域でよく発生する自然災害に適応力が高い車を選んで乗りこなすのも、かけがえのない家族の安全を守る、有効な対処法のひとつと言えるのではないでしょうか。
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