運転免許証の更新期間が満了する日の年齢が75歳以上のドライバーは、高齢者講習の前に認知機能検査の受講が義務付けられています。認知機能検査は、運転免許証の更新期間満了日の6ヵ月前から受けることができるものです。
検査はどのようなもので、合格しなければ運転ができないのでしょうか? また、検査受講の対象でなくとも、高齢ドライバーであるご両親に対し「最近ちょっと運転が心配だな」という方に、すぐにできるチェックリストもご紹介します。
認知機能検査とは
認知機能検査とは、75歳以上の運転者を対象に、3つの項目から運転に必要な記憶力や判断力を測定する簡易検査です。受験者は検査員の説明を受けながら、検査用紙に受検者が記入し、30分程度で完了します。なお、受験にあたり手数料として750円がかかります。
検査対象者には、運転免許証の更新期間が満了する日の6月前までに認知機能検査と高齢者講習の通知が警察から届きます。普段、車を運転していない方であっても、75歳以上の方が免許証を更新するためには必ず検査を受けなくてはなりません。
また、75歳以上の方が信号無視や一時不停止などの一定の交通違反をした場合も、必ず受験が必要となります。通知書を受け取ってから1カ月以内に検査を受けなければ免許の停止や取り消し対象となるため注意が必要です。
検査項目は次の3つです。
(1)時間の見当識
検査時の年月日、曜日、時間を答えます。
(2)手がかり再生
4種類のイラストが記載されたボートが提示され、検査員の説明を受けながら記憶します。その後、いくつかイラストについて質問をされるので、順次口頭で回答します。その間、介入課題があり、数字がたくさん書かれた表を見ながら特定の数字を指示通りに斜線で消していきます。
(3)時計の描写
時計の文字盤を書き、指定された時刻を示す針を文字盤の上に描き足します。
これら3つの検査が終了したら、採点が行われ、次の三段階で結果が通知されます。
①49点未満「記憶力・判断力が低くなっている(認知症のおそれがある)」
②49点以上76点未満「記憶力・判断力が少し低くなっている(認知機能低下のおそれがある)」
③76点以上「記憶力・判断力に心配がない(認知機能の低下のおそれがない)」
そしてこの結果を受けて、それぞれ受けるべき高齢者講習の時間や内容が変わります。
②は3時間講習(受講料7,950円)、③は2時間講習(受講料5,100円)で高齢者講習を受けることができますが、49点未満だった場合は臨時適性検査または医師の診断が必要となり、そこで認知症と診断されると免許の取り消しまたは免許の停止となります。
認知機能検査の結果はどう判断すればいいの?
2017年の3月に道路交通法が改正されたことにより認知機能検査の強化がなされました。改正後の2017年3月から2018年の3月までの一年間、全国で210万5,477人もの方が受験しています。
そのうち、最終的に免許が取り消しとなったのは1,892人でした。これは、法改正前の592人と比べると約3倍にものぼる数値です。法改正後の検査で「認知症の恐れがある」と判定を受けたのは57,099人にもなりました。受験者の割合からするとおよそ3%ではありますが、数値だけで見ると意外と多いと感じるかもしれません。
検査の結果、「記憶力・判断力が低くなっている」とされても、免許証の更新をすることはできますし、直ちに免許が取り消されるわけではありません。ただし、認知症について臨時適性検査(専門医の診断)を受けるか、診断書提出命令により医師の診断書を提出しなければならず、診断の結果によっては、聴聞等の手続の上で運転免許の取消しとみなされてしまうこともあります。
また、「記憶力・判断力が少し低くなっている」と判断された方の場合、信号無視や一時不停止の違反をしたり進路変更の合図が遅れたりする傾向が見られるため、今後の運転に十分注意することはもちろん、医師やご家族に相談して安全に運転するためのサポートしてもらう必要があります。
認知機能検査はあくまでもひとつの基準であり、絶対に運転してはならないというものではありません。とはいえ、自分自身のことを客観的に知る機会であり運転できるか否かの基準ともなりますので、結果をしっかり家族で話し合い、運転を続ける場合にはどうすべきかを一緒に考えてみましょう。
「心配だな」と思ったら。今すぐできるチェックリスト
以下で紹介するチェックリストは『運転時認知障害早期発見チェックリスト30』と呼ばれるもので、認知症予備群とも言える軽度認知障害の人が運転時に表われやすい事象をまとめたものです。
このチェックリストは警視庁でも採用されています。すぐにできるチェックリストで、一度現在の状況を理解してみてもいいかもしれません。
『運転時認知障害早期発見チェックリスト30』
1 | 車のキーや免許証などを探し回ることがある。 | |
2 | 今までできていたカーステレオやカーナビの操作ができなくなった。 | |
3 | トリップメーターの戻し方や時計の合わせ方がわからなくなった。 | |
4 | 機器や装置(アクセル、ブレーキ、ウィンカーなど)の名前を思い出せないことがある。 | |
5 | 道路標識の意味が思い出せないことがある。 | |
6 | スーパーなどの駐車場で自分の車を停めた位置が分からなくなることがある。 | |
7 | 何度も行っている場所への道順がすぐに思い出せないことがある。 | |
8 | 運転している途中で行き先を忘れてしまったことがある。 | |
9 | 良く通る道なのに曲がる場所を間違えることがある。 | |
10 | 車で出かけたのに他の交通手段で帰ってきたことがある。 | |
11 | 運転中にバックミラー(ルーム、サイド)をあまり見なくなった。 | |
12 | アクセルとブレーキを間違えることがある。 | |
13 | 曲がる際にウインカーを出し忘れることがある。 | |
14 | 反対車線を走ってしまった(走りそうになった)。 | |
15 | 右折時に対向車の速度と距離の感覚がつかみにくくなった。 | |
16 | 気がつくと自分が先頭を走っていて、後ろに車列が連なっていることがよくある。 | |
17 | 車間距離を一定に保つことが苦手になった。 | |
18 | 高速道路を利用することが怖く(苦手に)なった。 | |
19 | 合流が怖く(苦手に)なった。 | |
20 | 車庫入れで壁やフェンスに車体をこすることが増えた。 | |
21 | 駐車場所のラインや、枠内に合わせて車を停めることが難しくなった。 | |
22 | 日時を間違えて目的地に行くことが多くなった。 | |
23 | 急発進や急ブレーキ、急ハンドルなど、運転が荒くなった(と言われるようになった)。 | |
24 | 交差点での右左折時に歩行者や自転車が急に現れて驚くことが多くなった。 | |
25 | 運転している時にミスをしたり危険な目にあったりすると頭の中が真っ白になる。 | |
26 | 好きだったドライブに行く回数が減った。 | |
27 | 同乗者と会話しながらの運転がしづらくなった。 | |
28 | 以前ほど車の汚れが気にならず、あまり洗車をしなくなった。 | |
29 | 運転自体に興味がなくなった。 | |
30 | 運転すると妙に疲れるようになった。 |
いかがでしたか?30問のうち、5つ以上にチェックが入ったら注意が必要です。このチェックは毎年1度は行うようにしてください。そして、ご自身でも、ご家族の中でも、「チェック項目が増えた」と感じたらすぐに専門医や専門期間での受診を検討しましょう。
運転技能を見える化。スマホひとつで見守りサポート
認知機能の低下を判断するのは本人や家族です。年齢や身体機能の低下は気づかないうちに緩やかに起きるため、今まで優良ドライバーだったから、今後も大丈夫というものでもありません。
ただ、いきなり返納なんてことになると、買い物や通院などが思うようにできず急に生活が不便になってしまうことが考えられます。高齢ドライバーに少しでも長く、健康な状態で運転をしてもらうためには、ご家族の協力が必要不可欠です。
一緒に暮らしている場合も、離れて暮らす場合も、高齢の両親の運転が心配な方にオススメなのが、スマートドライブが提供している「SmartDrive Families(スマートドライブファミリーズ)」です。家族の運転をスマホで見守るこのサービスは、運転情報を見える化することで「毎日安全な運転ができているかな」「長時間運転したみたいだけど体は疲れていないかな」などの心配事を解消します。
ワンタッチで装着できるデバイスで、今どこにいるのか、車が走行中か停車中かといったリアルタイムの情報だけでなく、今日どれくらいの距離を走ったのか、何時間程度運転したのか、どのルートを通ったのか、どんな運転だったか、といった運転の詳細まで取得することができるため、異変があった際はすぐに気づくことができます。
また、運転ごとに急ハンドル・急減速・急加速のスコアも表示して、どこでどんな操作があったのか、どの操作が危険運転につながるかが明確になるため、長く運転を続けるための改善策をご両親と一緒に考えることができます。
改善点がわかったことで次の運転でより安全を気遣うこともできますし、運転スコアが向上すればドライバーの意識やモチベーションもアップするはず。いつも行くスーパーへの運転ルートが大きく違っているのが見受けられたら、「何かあったのかな?」といち早く気づいてあげることができましょう。
そこで一声かけてあげたり、一緒にチェックリストを確かめたりすることで、ドライバーも自分の運転に対し客観的な情報が得られるため、今後運転すべきか続けるべきかが早い時点で判断できるかもしれません。大きな事故につながる前に、また、ご両親の異変にいち早く気づくために、このようなデバイスを活用して様々な観点でサポートしてあげましょう。