
この企画では3回にわたって各種マイカーローンの詳細をお伝えします。
前回は銀行系やJAのマイカーローンについて解説しましたが、車を買う際は新車ディーラーが独自で提供しているマイカーローンや、中古車販売店が紹介する信販系のローンを利用する方が一般的です。
いずれも、銀行などの金融機関に行く必要はなく、契約時に担当者が手続きを代行してくれるため、簡単で手軽なところが魅力。
もっと詳しく知りたい方に向けて、新車ディーラーのマイカーローンそれぞれの商品スペックや特徴、さらにメリット・デメリットについて解説します。
お任せで楽チンなだけじゃない?新車ディーラーのマイカーローン
憧れのマイカーを購入するとなると心もウキウキしてくるものですが、先立つお金を準備するため、各自動車メーカーでマイカーローンを組むことも考えなくてはなりません。
どんな会社が提供しているローンかをいちいち確認する方はそう多くありませんが、メーカーによって金利などの商品スペックが異なるのでしっかり理解した上で申し込みをしてください。
基本的に、新車をディーラーで購入する場合は、以下のように各新車メーカー本体が100%出資で運営する子会社が、貸し付けと回収を担当します。
ディーラー名 | ローン会社 | 金利 |
トヨタ | トヨタファイナンス | 非公開 |
日産 | 日産ファイナンシャルサービス | 約5,8% |
ホンダ | ホンダファイナンス | 約3,5% |
マツダ | マツダクレジット | 約2,99% |
一番気になるのは金利が明確ではないことです。ネッツ、トヨペット、カローラと、車種によって販売チャネルが分かれるトヨタの場合、店舗が変われば兄弟車種で同価格のノアやヴォクシーであっても、金利が変化することもあります。
基本的には4~5%が相場です。また、一見するとマツダが最も低金利ですが、意中の車が必ずしもマツダ車であるとは限りませんよね。トヨタ車はトヨタファイナンスでしかローンを組めないため、車種を選択する自由度はそんなに大きくありません。
加えて、新型モデルが登場した際には各メーカーとも販売促進のため、「特別低金利キャンペーン」を展開するのが常。比較的ホンダが他メーカーより積極的で、うまくタイミングを併せれば、銀行やJAより安い金利で最新モデルをゲットできることもあります。
いずれにせよ、購入店舗・車種・購入時期はもちろん、ボーナス併用・残価型などのローンプランによっても金利は変化しますので、購入契約を結ぶ前にきちんと確認しておきましょう。
なお、スズキやダイハツなどの軽自動車ディーラーの金利はおおむね3,5~4,5%程度で、新型が出ると低金利キャンペーンを打ち出すこともあります。
ディーラー系は銀行系より審査に通りやすいって本当?
結論から述べると本当です。同じ借入れ総額であれば、銀行系やJAと比較すると圧倒的にディーラー系マイカーローンの方が審査に通りやすくなります。細かい審査ポイントと合格基準はそれほど大差ありませんが、ディーラー系のマイカーローンには、「所有権留保」という伝家の宝刀が存在するからです。
所有権留保とは、簡単に言うと「その車を自由に使用して構いませんが、所有権はうちが持っておくので、もし返済できなくなったら、とっとと引き上げてしまいますよ!」というものです。つまり、購入した新車が「人質」に取られているのと同じ状態になるため、審査のハードルが所有権留保を行わない銀行系よりグンと低くなるというわけです。
「うちの車はどうだったかな?」と気になった方は、車検証に記載されている仕様車と所有者が自分になっているか、チュックをしてみてください。もし、所有者の欄に「トヨタファイナンス」など、ローン会社の名前が入っており、まだ返済途中である場合は、所有権留保がなされています。
なお、購入者の年収などといった条件が良く、軽自動車などで借入総額が安めであった場合は、所有権留保がなされないこともあります。
新車ディーラーでローン審査に落ちた!理由は何?
所有権留保という切り札があるとはいえ、ディーラー系マイカーローンの審査は、「誰でも合格する」という訳でもなく、残念ながら審査不合格になってしまうことも少なくはありません。なぜなら、ディーラーローンを組む=新車購入資金に充てることになるわけですから、普通車なら200万円オーバーは当たり前ですし、軽自動車でも最近の多機能車種なら150万円を超える借入金額になります。
ですので、ディーラーローンはどこも、「満18歳以上で安定した収入がある方」であれば申込み可能とはしているものの、次のいずれかに当てはまるか、過去に債務整理や長期延滞などの金融事故を起こしている場合、審査通過は難しいと考えられます。
- 年齢が20代前半である
- 勤続年数が2年以下
- アルバイト・パートである
- 年収が購入希望者の金額より低い
ただし、金融事故はともかく、上記した項目に1つ程度しか当てはまらない場合は、銀行系の記事で紹介した場合と同様に、頭金を入れて借入総額を減らすことができれば、審査のハードルを幾分下げることも可能です。
また、乗り換えの場合はディーラーから「下取り」をすすめられるはずですが、下取り査定額は買取査定額より安くなりますし、値引きと合算されるため境目がわかりにくく、値引き交渉の妨げにもなってきます。
購入契約の前に買取業者に売却をして現金としてプールしておけば、担当者から審査が難しいと言われた際は頭金として利用できますし、難なくパスしそうな場合はオプション購入費に充てても、レジャー費用や貯金に回すのも自由なので、何かとおトクです。
ディーラーローンのデメリットとは
もともと金利はそれほど高くないですし、キャンペーンをうまく利用さえできれば銀行系をも下回る低金利で新車を購入できるため、大きなデメリットはあまり存在しません。
しかし3つほど、指摘しておきたい点があります。
1.審査のハードルを下げてくれる面ではメリットともいえる、所有権留保の存在
所有権留保がなされた車は、残念ながら購入者の持ち物ではなく、車検証に記載されたローン会社の所有物なので、ローンを完済するまで他人や業者へ、ローン会社の許可なく勝手に売却することができません。
当然ながら、返済途中なのに売却を許可するローン会社なんてありませんが、転勤・引越し・結婚などの理由で、急に車が不要となるケースも場合によってはありえるでしょう。
そうした時は、①残債を一括返済してから所有権留保の解除手続きを進め、完了後に車を売る方法と、②事前に買取査定してそれが残債を上回っていれば、買取業者がディーラーへの一括返済を代行して所有権留保を解除するという、二つの方法があります。
いずれにしても、買取査定額が残債を上回らなければ一定額の負担がかかってきますので、一括査定サービスで複数社へ査定依頼・査定額をを比較し、最も高く売れる業者を探すようにしましょう。
2.親会社以外の車種を購入できない
ディーラー系のマイカーローンの場合、トヨタであれば「T-UP」といった、各ディーラー系中古車販売店以外の中古車購入には利用できませんし、前述した通りローン会社の親会社以外の車種を、購入することはできません。車種の選択肢の幅が狭いというのはディーラーローンの大きな弱点で、自由度で言えば銀行系の方が断然上になってきます。
3.各種税金はローンに組み込めない
新車購入時には本体価格やオプション価格と併せて、
- 自動車税
- 自動車取得税
- 重量税
- 消費税
- 自賠責保険料
などが加算され総額が見積りされるものの、ディーラー系ローンではこの税金などを、ローンに組み込むことができません(銀行系は組み込み可能)。軽自動車やコンパクトカーであれば、それほど大きな金額にはなりませんが、高級車や大型SUVになると、合計で数十万円に達するため、なんらかの方法で金策を練らなくてはなりません。
まとめ
最後にいくつかデメリットをあげましたが、所有権留保についてはローン完済まで乗り続けていれば何ら問題はないですし、低い自由度についても目当ての車が決まっていれば、大きなデメリットとなりえません。
また、ローンに組み込めない税金などについても、今の車を上手に売却しそれに充てれば、購入時の持ち出し資金をなくすことも可能ですので、工夫次第でやりくりできるひとつのオプションですね。
生活設計も考えつつどういったローンが今のライフステージにベストなのかよく検討してみてくださいね。
