免許返納ってどうすればいいの?手続きや特典を徹底解説! | Smartdrive Style

近年メディアでよく話題になる高齢ドライバーによる運転事故や免許返納。
一方で、地方で暮らす高齢者にとっては、車移動は生活に切っても切り離せないものでもあり、簡単に免許返納できないという事情もあるでしょう。

各人諸事情はある中で、今回の記事では、「とりあえず手続きだけは今のうちに知っておきたい」という方やそのご家族のために、運転免許返納の手続きや返納による特典について分かりやすく解説してみたいと思います。

 

免許の自主返納とは

2018年5月29日、神奈川県の茅ヶ崎市で90歳の女性が運転していた車が歩行者を4人はねて死傷させるという、痛ましい事故が起こりました。こうした70歳以上の高齢者による大きな事故をきっかけに、改めて運転免許証の自主返納制度が注目されています。

運転免許自主返納とは、免許が不要になった人や、高齢になって身体機能に不安を感じるようになった人が自主的に免許を返納できる制度のことです。1988年4月、ドライバーの高齢化によって高齢ドライバーによる事故が多発していることから、この制度が導入されました。

免許を返納する制度があることはなんとなく知っている人は増えてきましたが、手続きの仕方や身分証明書の扱いなど、詳しいことについてはまだまだ認知されていないのが現状です。

運転免許自主返納には、何歳からという制限は設けられていません。基本的に、免許を持っている人であれば、何歳からでも返納を申し出ることができます。逆に何歳以上は免許を必ず返納しなければいけないという法律もないので、現状では何歳まででも免許を持っておくことも可能です。

 

返納を考えるのに一番重要なのが“タイミング”

一番難しいのが、免許を返納するタイミングかもしれません。

返納を検討するきっかけの1つは、「高齢運転者」と呼ばれるようになる70歳になったとき。歳を重ねるにつれて身体機能や判断能力が低下してしまい、ハンドル操作を誤ったり、ブレーキを踏むのが遅れてしまったりする危険性が出てくるからです。ちょっとした操作ミスや判断の遅れが死亡事故につながることも少なくありません。

下の表は交通事故の死者数に対して65歳以上の高齢者の占める割合を表にしたものです。

H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29
死者全体に占める高齢者の割合 48.4 49.9 50.3 49.2 51.4 52.6 53.6 54.6 54.8 54.7

参照:警察庁交通局 平成29年における交通死亡事故の特徴等について

 

10年前から約50%という高い水準が続いており、少しずつですが年々割合が増加していることが分かります。また、下の表は免許人口10万人当りの死亡事故件数を年齢別にしたものです。

75歳以下と以上でそれぞれの平均を出すと、75歳以下で10万人当り3.7人、75歳以上で10万人当り7.7人の死亡事故が起きていることになります。つまり、75歳以上の人は75歳以下の人に比べて倍以上も死亡事故を起こしているということです。

これらの表を見ていただけば、高齢者のドライバーが死亡事故を起こしてしまうリスクがいかに高いかがご理解いただけるのではないでしょうか。もちろん、70歳を超えても問題なく運転できる人は大勢います。しかし、何らかの身体機能や判断能力の低下を自覚し始めたなら、それが免許返納を検討し始めるタイミングだと言えるでしょう。

 

免許を自主返納する方法

それでは、免許を自主返納するのはどのような手続きをすればいいのでしょうか。

手続きが難しそうで諦めてしまったという人も少なくないようですが、実際は、そんなに複雑なものではありませんので、これから解説する内容をご参考ください。

運転免許自主返納の手続き場所

返納手続きは、運転免許センターまたは警察署で行うことができます(※一部の警察署では返納手続きができない場合がありますので、事前にご確認ください)。そのため、基本的には平日の受付が多いようです。秋田県や高知県など、地域によっては交番と駐在所でも返納手続きができる自治体が少しずつ増え始めています。

しかし、全体で見ると交番や駐在所で手続きができる自治体は少ないので、最初から運転免許センターか警察署に向かうか、事前に近くの交番に問い合わせてみてください。

免許返納に必要な持ち物

免許返納には、基本的には有効期限内の運転免許証があれば手続きを行うことができます。地域によっては印鑑を求められることもあるので、訪れる際には印鑑も準備しておくいいでしょう。

許返納と同時に運転経歴証明書の申請をする場合は、他にも準備が必要になります。

・返納する運転免許証
・印鑑
・交付手数料1,100円
・申請用写真
(縦3センチメートル×横2.4センチメートル(1枚)無帽、正面、上三分身、無背景で申請前6か月以内に撮影したもの)

免許センターで免許を返納する場合は、その場で運転経歴証明書の申請用写真を撮影できるので、その場合は準備しなくても大丈夫です。また、返納する免許証の住所に変更が必要な場合は、住民票など変更後の住所を確認できる証明書類を準備する必要があります。

免許の返納を代理手続きすることはできる?

免許の返納は、基本的には本人が手続きを行わなければいけません。しかし、免許を返納したいけど、体調が悪いため本人が手続きを行えないケースもありますよね。そのため、最近では親族や介護施設の管理者などが代理人となって返納の手続きができる自治体が増えてきています。

まずは、お住まいの自治体が代理手続きを行っているか確認してください。代理手続きを行う場合は、いくつか準備するものがあります。

・返納する本人の免許証
・委任状(免許を返納する本人が自筆で記載)
・代理人申請者の住所、氏名、生年月日が確認できる書類(運転免許証や住民票など)
※代理人が介護施設等の管理者の場合、免許返納を申請する本人がその施設に入居していることを証明する書類が必要な場合があります。

委任状は免許センターや警察署に準備されているので、事前に入手しておく必要があります。また、地方によっては委任状の他に運転免許取消申請書や代理人誓約書といった書類が必要な場合も。全ての自治体で免許返納の代理手続きが可能なわけではありませんが、警察庁が全国の県警に代理人手続きを認める対応を2015年に要請しているので、今後は代理手続きが行える自治体は少しずつ増えていくかもしれません。

 

返納後は身分証明がわりに「運転経歴証明書」を

出典:警視庁

免許を返納すると、写真付きの公的な身分証明書がなくなってしまうので不便だ、と心配になる方もいるでしょう。しかし、免許を返納する際に同等の役割を担った身分証明書として「運転経歴証明書」を申請することができます(交付は最寄りの運転免許試験場で行います)。運転免許証の取消しを受けてから5年以内に交付申請をしなくてはなりませんので、一緒に手続きを行いましょう。 

「運転経歴証明書」とは、免許証を返納した日から遡って5年間の運転に関する経歴を証明するもの。運転はできなくなりますが、今まで安全運転を努めてきたことが証明されます。運転経歴証明書は今まで利用していた免許証と同じカードサイズです。

「運転経歴証明書」は公的な身分証明書として様々な機関で利用できますし、高齢運転免許自主返納サポート協議会の加盟店や美術館などで様々な特典を受けることができるのがメリット(原則として65歳以上が対象です)。

ただし、運転経歴証明書を申請するためには、次の条件があります。

・有効期限内の運転免許を返納している
・免許を返納してから5年以内である
・免許の取り消し基準に該当していない
・免許停止中、又は免許停止の基準に該当していない
・再試験の基準に該当しない

申請場所や受付時間、必要な書類などは地域によって異なりますので、各都道府県警察の運転免許センターに問い合わせてご確認ください。

 

「運転経歴証明書」があるとこんなに特典がある

自治体によって受けられる特典は異なりますが、「運転経歴証明書」を持っていると、様々な特典を受けられるようになります。食事代やショッピングの割引、タクシーやバスの優遇処置など魅力的なものがたくさんあるので、これは是非とも活用したいところ。

ただし、特典によっては事前申請が必要なものや年齢制限があるなど条件が定められているものもあるので注意が必要です。

各自治体のホームページでは、運転免許自主返納サポート特典の一覧を載せているので、ご自身の地域ではどのような特典が受け取れるのか、確認してみてください。一部ではありますが、実際にどのような特典があるのか、地方ごとの特典例をご紹介しましょう。

【東京都の特典例】

・引っ越し代金の割引
日本通運株式会社やフコクロジスティクス株式会社で引っ越し代金が通常料金から10%割引に。
・運転経歴証明書所有者専用定期預金
東京シティ信用金庫や巣鴨信用金庫など一部の信用金庫で運転経歴証明書の所有者専用の優遇金利として店頭金利+0.05%で預金することができます。

・ホテル直営レストランの割引
帝国ホテルや浅草ビューホテル、渋谷エクセルホテル東急など一部のホテル直営レストランにて10%の割引を受けられます。

・試食無料券や宅配サービスの割引制度、配送料無料
大手スーパーのイオンや三越伊勢丹、高島屋などでは、配送無料サービスや試食券、優待クーポンが発行されます。車で買い物に行きづらくなった場合も、宅配サービスが買い物をサポートしてくれるでしょう。

【大阪府の特典例】

・ショッピングでの割引
天神橋筋商店街や千日前道具屋筋商店街など、一部の商店街に入っている店舗や様々なサポート企業で割引や特典を受け取ることができます。
例えば、ドミノ・ピザでは店頭価格から10%割引、アシックスウォーキングの大阪府内直営店では店頭価格から15%割引が受けられるなど、ショッピングに関する様々な特典が用意されています。

・グルメの割引
株式会社ユウ・フード・サービスを始めとするサポート企業が運営する飲食店など、様々なレストランで飲食代金の割引を受けられます。

・レジャーの割引や特典
サポート企業が運営するレジャー施設で割引や特典を受け取ることができます。通天閣の一般展望料金を100円割引や、犬鳴山温泉では1泊2食の基本料金から10%割引や日帰り入浴料金を575円に割引してもらえます。

【愛知県の特典例】

・タクシーの割引やバスの無料券を進呈
愛知県タクシー協会に属するタクシー会社でタクシー運賃を10%割引してもらえます。(70歳以上の方で運転経歴証明書を提示が必要)また愛知県の武豊町では65歳以上の方を対象にコミュニティバスの無料乗車券2年分を贈呈しています。

・自動車買取りで特典プレゼント
サポート企業で車を買い取ってもらうと商品券がもらえます。例えば株式会社ラビット・カーネットワークでは自動車買取・販売時に5,000円の商品券をプレゼントしてもらえます。また、株式会社JCM名古屋支店では自動車買取り時に商品券か楽天Edy1万円分をプレゼントしてもらえます。

・住宅購入で特典プレゼント
サポート企業で住宅を購入すると特典が受け取れます。トヨタすまいるライフ株式会社では新築住宅、新築マンション成約時にインテリアチケット20万円分をプレゼントしています。また、セキスイハイム中部株式会社では、注文住宅では建物本体価格から3%割引、賃貸住宅では建物本体価格から2%割引してもらえます。

特に、高齢者人口が多いとされる秋田県、高知県、島根県は次のような特典を受けることができます。地方は特に温泉施設の割引制度が充実しているので、健康促進のためにもぜひ利用をしてみてはいかがでしょうか。

【秋田県の特典例】

・タクシー乗車運賃が10%割引、バス代も安くなる
県内のすべてのタクシーで割引が可能に。また、県内のバス会社、中央交通、羽後交通、秋北バスでバス回数券割引があり、通常1,200円のところを1,000円で購入可能。

・商品配達料金が無料
県内のホームセンターやスーパーなどの配送料がすべて無料になります。

・お風呂や温泉の入浴料が割引
ホテルや旅館での入浴料金や宿泊料金が割引に。

・理髪店が10%割引
多くの理髪店が利用料金の10%割引対象になっています。

【高知県の特典例】

・鉄道・路線バスが基本半額
土佐くろしお鉄道、西南鉄道、宇和島自動車、ジェイアール四国バスなど、各鉄道と路線バスで普通運賃が半額に。お得な定期券のサービスも。

・家事代行サービスの割引
買い物や掃除、洗濯まで、ニチイ学館の家事代行サービスが割引になります。スポットプランだと5%割引、初回利用は3,980円に。

・レンタサイクル無料券配布
四万十市のレンタサイクルはたじでは、レンタサイクル無料券10枚を配布しています。

・温泉入浴料が割引または1回無料
むささび温泉や四万十温泉の入浴料が割引に。半額や1回無料はおとくですね。

【島根県の特典例】

・タクシー10%割引、バスは半額
それぞれのタクシーで10%割引、石見交通は全線で半額で利用できます。

・各市で乗車チケットや温泉入浴料を無料交付
例えば、松江市は70歳以上を対象に、バスカード・コミュニティバス回数券、温泉入浴券・電動アシスト自転車購入助成金を申請に基づき2万円以内で一度だけ交付しています。出雲市では市内協力事業者が発行しているバス・タクシー・一畑電車の回数券を5,000円分支給、奥出雲町では65歳以上のからに生活交通サポート券を2万/年(200円単位の金券)を交付しています。バスやタクシー宅配サービスが含まれます。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。運転免許自主返納制度は、高齢者ご本人を守るための制度でもあります。地方では車がないと生活することが難しかったり、免許を手放すことへの不安があったりするなど、免許を自主的に返納することのハードルは決して低くはありません。

同時に、高齢になるにつれて高まるリスクというのも自他ともに認識していく必要もあり、あとから後悔してしまうような事故を未然に防いでいくということも社会として課題になっています。各人が家族としっかり相談し、返納後の生活も考慮した上で、早めに準備に取りかかっていくことが必要でしょう。

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