事故は車を運転する人に必ず付きまとうリスクです。
どんなに安全運転をしていたとしても、他者の不注意によって事故に巻き込まれることもあるでしょう。この記事では、“もしも”の事故を想定して、事故の前後で用意しておくべきことや事故後の対処法をご紹介します。
もしもに備えて事故後の対応を周知しておこう
実際に事故を起こしてしまうと、人は冷静ではいられなくなります。「事故なんて起こさないから大丈夫」ではなく、もしものことを想定し、事故を起こした時も冷静に判断をして動けるよう、事故に遭った時用の“指示書”を車内に忍ばせておきましょう。
確認すべきことリスト
【自分が加害者の場合】
- 怪我人や負傷者がいないか確認する。(応急処置が必要な場合は即座に行う)
- 警察を呼ぶ(負傷者がいる場合は、救急車も呼ぶ)
- 車を道路の脇等、交通の邪魔にならない場所に移動させる(新たな事故を防ぐため)
- 目撃者がいれば連絡先を教えてもらう(万が一、裁判になった際に有利に進めるため)
- 事故相手の連絡先、住所を聞く。(この時、相手の入っている保険会社も必ず聞く)
- 自分の保険会社に連絡し、状況を説明する(時間がたつと保険利用が出来なくなる恐れがあるため)
- 働いている人は、勤務先に連絡し、事情を話す(会社での今後の動きを仰ぐため)
- 事故現場、事故に関係するものはすべてスマホで写真を撮っておく(万が一、裁判になった際に自分を有利にするため)
【自分が被害者の場合】
こちらが被害者の場合は、上記8つに加えて、以下の2点を忘れずに行なってください。
- 事故が起きて相手が逃げた場合、ナンバープレートを覚える
- 軽傷でも重傷でも必ず病院に行く
また、事故後のやり取りをスムーズにするために次の項目を加害者の方から聞ける範囲で構いませんので聞いておきましょう。
① 加害者の氏名・住所・連絡先
② 加害車両の自賠責保険の保険会社・契約番号
加害者の自賠責保険の番号などについては、自動車損害賠償責任保険証明書で確認できます。
③ 加害車両の任意保険の保険会社・契約番号
加害者が任意保険に加入している場合は保険証券で番号を確認しましょう。通常、その後の損害賠償のやり取りは任意保険会社が行うので確認する必要が出てきます。今後の交渉は加害者の保険会社と行っていくことになるので大事な情報になります。
④ 加害車両の自動車登録番号
⑤ 加害車両の所有者
自動車登録番号や加害車両の持ち主は、自動車検査証(車検証)に載っています。自賠責保険の被害者請求の場合に必要ですし、所有者と運転者が違う場合は運転者はもちろんですが、所有者からも賠償請求できる可能性があります。
⑥ 加害行為者の勤務先の名称・連絡先
勤務中の事故であれば、勤務先に賠償請求ができたり、勤務先の保険が使われたりする可能性も。
上記の中でも最低限、加害者の連絡先だけは控えるようにしてください。
もしも事故にあったら…事故後すぐの対応は
停車中に後ろからいきなりぶつかられた場合以外は、事故が発生した時点で、加害者・被害者ともに過失が伴います。不安で頭が真っ白になるかもしれませんが、見たこと、自分が行ったことを事細かく警察に伝えましょう。
よく、相手から「首が痛いから今すぐに治療費を払って欲しい」「あなたのせいで起きた事故なので全て弁償してください」などと難癖をつけられ、逆らうと怖いから相手の言いなりで進めてしまった、というケースを耳にします。その場合、自分の過失ではない部分まで責任を取らされる可能性があるので、当事者同士だけで話し合いはせず警察が来るまで待ちましょう。
★被害者から「怪我がないので警察を呼ばなくて結構です」と言われたら?
お互いに怪我がなくても警察へは届け出が必要です。これを怠ると道路交通法違反に問われる可能性もありますので、当事者だけで事故を解決しないように注意してください。
★ドライブレコーダーは本当に過失割合に関係する?
交通事故では警察による実況見分調書が重要な証拠として扱われますが、例えば、あなたが重傷のため救急車で搬送されなければいけなくなった場合、警察は加害者からの話で実況見分調書を作成してしまう可能性があります。
しかし、その際にドライブレコーダーの映像があれば、事実を証明することができ交通事故裁判で有利に働く場合も。ドライブレコーダーを装着していたけど、不具合があって撮れていなかった!ということも実際にあるため、定期的なメンテナンスは欠かさず行ってくださいね。
ドライブレコーダーの映像提出に関しては、自分の任意保険会社に連絡する際に相談をしてみてください。自分で示談を行う際は、警察に早めの提出を。ドライブレコーダーの提出は義務ではありませんが、相手の証言に矛盾が生じていた場合は、早急に提出をしましょう。
★謝ると過失割合に影響するの?
示談などで不利になることはありませんが、「謝らないと罪が重くなるケース」、「謝ったがためもめ事が起きてしまうケース」の2パターンがあります。
【謝らないと罪が重くなるケース】
追突事故や信号無視、駐車中の車に追突など、自分の過失が100%であった場合は事故後、心を込めて謝罪をしましょう。被害者の方に怪我を負わせてしまった場合は、後日お詫びの品を手に、相手先の病院やご自宅に伺うことも考慮してください。謝罪の際に相手から断られたり、拒否されたりした場合は自分の保険担当者から連絡してもらうようにお願いしてみましょう。
このケースで最も気をつけたいのは、被害者側に直接金銭を渡してはいけないということ。もし、相手が金銭を要求してきた場合は、「慰謝料等は保険会社から支払われます」「金銭のことは保険会社に任せています」といってその場を逃れてください。後々のトラブルを防ぐためです。
【謝ったため、もめ事になってしまうケース】
相手の過失が少ないと、謝罪をしたことによって「謝られたんだから、私は全く悪くない」と受け取る被害者の方もいるようです。中には謝罪を逆手にとって交渉を有利に進めようとする方もいるので、必要以上な謝罪は避けましょう。
×「今回の事故では本当にご迷惑をおかけいたしました。申し訳ございません。」
〇「お怪我の具合はいかがですか?今回の事故でお怪我を負わせてしまい、申し訳ございませんでした。」
謝り方のポイントは、「事故に対する」謝罪ではなく、あくまで「怪我に対する」謝罪に焦点を置くのがベストです。
★保険会社とのやりとりで気を付けておきたいこと
加害者はもちろん保険会社へ連絡しますが、被害者も任意保険に加入している場合は、自身の任意保険会社に事故の報告をした方が良いでしょう。過失割合が認められない交通事故の場合、ご自身の保険の「人身傷害保険・搭乗者傷害保険・車両保険」を使用する可能性があるため、使用を前提として事故報告をしておく必要があるためです。
★事故の後は必ず病院へ
事故後の痛みはいつ起こるかわからないため、外傷がなくても必ず病院に行きます。痛みが起きてから通院しても、タイミングが遅いと事故時の怪我とは認定されない恐れがあるためです。病院へは当日中、遅くとも3日以内には行くようにして、診断書をもらうことを忘れないように心がけてください。
事故後の保険会社とのやりとりってどうなる?
交通事故は警察の実況見分が終了した後のやりとり・流れが重要。警察の実況見分が終わったら、自分が入っている任意の保険会社に連絡をします。
そして、事故現場や事故の発生日時、どんな事故だったか、相手の氏名、住所、相手の加入している自動車保険会社名を伝えましょう。そうすることで、保険会社の担当者が決まり、示談交渉などに必要な基本的な手続きを進めてくれます。
事故の種類にもよりますが、示談交渉は「損害が確定した時」が開始のタイミングだということだけ覚えておいてください。事故の種類は大きく「物損事故・人身事故・死亡事故」の3種類に分けられます。
・物損事故の示談開始タイミング
車の修理などがすべて終わり、損害額が確定した時点で示談交渉が開始します。損害額を確定しやすく、事故後1カ月くらいで示談交渉ができることも多いです。
・人身事故の示談開始タイミング
入通院治療中は後遺障害の内容なども確定はしないので、すぐには損害額が計算できません。入通院の期間は1カ月~1年、または2年の通院が必要な怪我を負うことも。怪我の大きさによって示談を開始するタイミングが変わるということです。
・死亡事故の示談開始タイミング
実際には、49日の法要が終わった頃に示談交渉を開始することが多いようです。
★保険会社の治療費打ち切りの話にのってはいけない
通院治療期間が長くなると、相手の保険会社が「早期に治療を終わらせて示談交渉を開始したい」と言ってくることがあります。相手の保険会社も営利目的の企業ですので、支払いを減らすために早期に治療を打ち切らせようとして、このような申し出をしてくるようです。
入通院の期間や治療日数、入院日数が長くなると、通院費・治療費・入通院慰謝料(傷害慰謝料)も高額になり、後遺障害認定なども受けやすくなるので、相手が支払う示談金の金額が上がります。あくまでも、治療を終わらせるかどうかの判断、いわゆる症状固定は、医師の判断に任せてください。交通事故で人身損害を被った場合には、症状固定するまで通院を続け、その後後遺障害等級認定をして、相手と示談交渉を始めることが大切です。
★示談の期間ってどのくらいかかるの?
おおよその示談期間は、次が目安です。
損害額のみ争いのある示談期間 : 3カ月以内に示談がまとまることが多い
過失割合に争いのある示談期間 : 3カ月以上かかることも多く、裁判に移行する場合がある
後遺障害等級の争いがある示談期間 :半年~1年以上示談がかかることもある
示談交渉が成立したら、示談書が送られ署名と捺印を求められます。示談書にサインすると、その内容でその交通事故の損害賠償金の全額が確定してしまうため、後から「やっぱり足りない」「追加で慰謝料を支払ってほしい」と言うことは基本的に不可能です。少しでも納得できない部分があれば、署名押印前に解決させておきましょう。判断が難しい場合は弁護士に相談を。
【示談交渉の相手は?】
通常は被害者側と加害者側の保険会社の担当者同士が代理人となって、示談をすすめていきます。被害者が自分の意見をはっきり主張しなければ、保険会社同士が適当なラインで示談をまとめようとすることもあるので、注意しましょう。
【直接、被害者本人が交渉するケースも…】
いつでも保険会社同士が交渉するわけではありません。例えば、追突事故のような「もらい事故」で被害者側の過失が全くない場合は、加入している保険会社の示談代行サービスが利用できず、直接被害者が加害者側の保険会社と示談することになります。また、加害者が任意保険に加入していない無保険事故の場合は、相手方本人と直接示談交渉をしなくてはなりません。
★会社勤めの方だけでなく、専業主婦の方でも休業損害は受けられる!
休業損害とは交通事故によるケガによって一定期間仕事ができなくなり、その結果収入が減少したことによる損害をいいます。会社員であれば、治療や入院で仕事を休んでいる期間の損害金額を請求することができますが、「私は専業主婦で収入がないから」と思っている主婦の方も同じように休業損害を請求することができるのです。
もし、主婦の方が事故で怪我を負ってしまった場合、育児や家事が十分にでき無くなってしまいます。家事労働は社会的にも金銭で評価できるものと考えられていますので、忘れないように請求をしてください。
安全運転を前提に事故ゼロを目指そう
事故を起こしてしまうと、やらねばならないことも考えなければならないことがたくさんあり、事故の深刻さによっては対応や負担が長期化する可能性もあります。
やはり事故を起こさないに越したことはないので、それに注力しつつも、万が一起こってしまった場合に備えて今回お話したような対応方法を理解しておけば、もしものことがあっても冷静に対処できるかと思います。他人からのもらい事故にも十分注意しながら、楽しいカーライフを送ってください。