損なの?得なの?「残価設定型自動車ローン」のしくみ | Smartdrive Style

車は決して安い買い物ではありません。そのため、車には「現金一括」「現金(頭金)+ ローン」「全額ローン」などいくつか購入方法にパターンがありますが、最近は「残価設定型自動車ローン」を車ディーラーで勧められたという人も多いのではないかと思います。

一時期「トヨタ、3年分ください」という子ども店長のキャッチーなCMが話題になりましたが、実はこれも残価設定型プランの宣伝でした。「月々の支払いが安く抑えられますよ」「数年後に自分の好きな支払い方法を選べますよ」などメリットが喧伝される中、「でもそれってどういう仕組みなの?」と疑問に思う人も少なくないでしょう。

今回の記事では、残価設定型自動車ローンとは何か、利用することでどんなメリットかを中心に解説していきます。

 

残価設定型自動車ローンの大きな特徴は、その名前の由来にあります。

「残価」とは、数年後にその車を下取り車として出した場合の価値=下取り価格のことを言います。そのため、支払い期間に応じて設定された「残価」が据え置かれたローン、という意味で「残価設定型プラン」「残価設定型クレジット」「残クレ」などの名称を用いて宣伝されていることが多いようです。もしかしたら、何度か目にしたことがあるかもしれませんね。

自動車メーカーHPの残価設定型自動車ローンの説明を確認してみましょう。それぞれのHPに書かれてある言葉を一部抜粋してあります。

トヨタ
・残価設定型プランとは、あらかじめ設定した3年後の価格を据え置いて、残りの金額を分割払いにするプランです。
・車両価格の一部をあらかじめ残価(=3年後の下取り価格)として据え置き、残りの金額を分割払い。
ホンダ
・数年後の買い取り保証額、つまり“残価”をあらかじめ設定。その“残価”を除いた金額を、分割でお支払いいただく買い方です。
・一定額を最終回のお支払いに据え置くので、月々の負担が少なくなり、気軽に新車に乗ることができます。

日産
・あらかじめ数年先のクルマの買取り保証額(=残価)を設定し、その額を差し引いた分だけ、分割してお支払いとなります。
マツダ
・一般的な通常クレジットでお支払い頂いたときよりも、月々のお支払い負担を軽くできます。(最終回のお支払分を除く)
・車両価格の一部をあらかじめ残価額として据え置き、残りの金額を分割してお支払い。
スバル
・クルマの下取り価格を残価として設定しています。
・残価額を差し引いた分をお支払いするので、月々のお支払いを格段に軽減することができます。

インターネットの口コミやまとめ記事では、よく「残りの金額をローンで払う」「下取り価格が自動車ローンから割引」「下取り価格を引いた金額でローンを組める」という文言がよく書かれていますが、各自動車メーカーのHPの説明ではこのような言い方は用いられていません。その代わりに見かけるのが、「残りの金額を分割払い」「“残価”を除いた金額を、分割でお支払い」など「分割で払う」という言葉です。また、各HPにはそれぞれ似たような説明図が描かれ、「残価=最終回支払い」としっかり明示されていることも共通しています。

つまり、実際には残価として保証される下取り価格は、あくまで最終回に据え置かれているというだけであって、ローンとして借り入れる金額そのものから引かれている訳ではありません。残価が自動車ローンの借入額に含まれていることは、各メーカーのHPに掲載された図を見るとはっきりわかります。

ですから、「残価分がローンから割引」や「残価以外の金額でローンを組める」ということではないのです。残価相当分の金額はローンの支払い最終回に設定されます。そのため、各自動車メーカーのHPでは「残価を除いた金額を、分割でお支払い」といった表現になり、「残価をローンから差し引きます」という書き方はしていません。

残価設定型自動車ローンの正しい説明

例えば、見積もり合計200万円の車を3年36回払いの残価設定型自動車ローンで購入し、3年後の残価を50万円と仮定しましょう。

インターネットのまとめ記事や口コミでありがちな説明、「残価以外の金額でローンを組む」をそのまま受け入れて考えると、150万円を3年36回の返済プランで借り入れ、残価の50万円はローンに含まれていないことになりますが、この認識は誤りです。200万円の自動車を買うために36回の残価設定型自動車ローンを利用する場合、残価の50万円は36回目の支払い=最終回に据え置かれて設定されます。つまり、36回の支払い回数のうち、35回は150万円を分割した額を月々支払い、36回目には残価分をなにかしらの手段で支払わなくてはならないということです。

ローンの借入額は150万円ではなく200万円で、残価50万円はローンから差し引かれるのではなく、最終回に据え置かれています。200万円を36回均等に分割して支払うローンに比べて、月々の返済額を抑えることができますが、元金が減る訳ではないため残価分にもしっかりと金利がかかります。ここが間違ってはいけないポイントです。残価部分が割賦元金に含まれているかどうかということは自動車ローン仕組みそのものに関わる大きな違いと言えるでしょう。最終回の支払い方法をその時の状況に合わせて選択できる点も、残価設定型自動車ローンの特徴です。

各社共通して次の3つの方法から選択することができます。

1.新しい車に乗り替える(下取り車として出す)
2.車を返却する
3.車を買い取り、乗り続ける(残価を一括払い/再分割払い)

月々に支払う金額やかかってくる金利相当額も変わってくる重要なポイントなので、利用をする前にしっかりと理解しておきましょう。

 

下取り額が保証されているという大きなメリット

最終回の支払い方法で1.新しい車に乗り替える、もしくは2.車を返却 の選択肢を選んだ場合は、それまで乗ってきた車を販売店に返すことになります。そのときに車を購入したディーラーでチェックを受け、規定をオーバーしていなければ追加料金は発生しません。そのままディーラーに車を引き取ってもらって手続きは完了します。

このときの残価設定型自動車ローンの大きな強みは、下取り価格が保証されていることです。通常、それまで乗っていた車を下取り車に出す場合は、下取り査定額はどうしてもその時の中古車相場の影響を受けます。ところが残価設定型自動車ローンは、設定された下取り価格が保証されているため中古車市場が下火の時期でも金額が下がることはないのです。逆に中古車市場が上向きになっている時期であれば、その差額はそのまま下取り価格に上乗せされます。下取り価格が残価より上がることはあっても下がることはありません。

しかし、いくら下取り価格が保証されているからといって、どんなケースでも残価通りの金額で下取りしてくれるわけではありません。下取り価格の保証には走行距離や内外装の損傷具合など、各社明確な基準を設けています。規定以上に走行距離や損傷が多い場合は下取り価格が減額されることになりますので、契約前によく確認をしておきましょう。

 

結局、残価設定型自動車ローンは得する?損する?

ここまで読むと、「残価設定型自動車ローンって、ローンで購入する人には本当にお得なの!?」とわからなくなる人もいるかもしれませんね。

金利面だけで考えれば、銀行等の金融機関の方が割安になっているケースが多いといえます。それでもディーラーで取扱いしている従来の自動車ローンよりも手数料は低く設定されているようです。HPを見ると残価設定型自動車ローンの金利手数料は各社3%前後がほとんどですが、販売店により個別に設定されているケースもあるので確認をしてみてください。

金利の違いはありますが、残価設定型自動車ローンは自動車ディーラーでしか取り扱いがない自動車ローンの方法であることは間違いありません。数年後の下取り価格を保証は金融機関にはできないからです。

得か損かを考えると、残価設定型自動車ローンはその特徴ゆえに、メリットを受けられる人とそうでない人は大きく分かれることになります。

残価設定型自動車ローンの利用に向いている人・いない人

残価設定型自動車ローンの利用に向いている人は、

  • 車を短いスパンで乗り替えたい人
  • 常に最新の車に乗っていたい人
  • 車を乗る期間が決まっている人
  • 走行距離が平均的、もしくはそれ以下の人です。

たとえば大学進学で親元を離れることになった女性が、通学のために在学中の4年間だけ車が必要になるケース。

4年の残価設定型自動車ローンで車を購入すれば、残価分を据え置いた金額だけで車に乗ることができます。200万円の車の残価が50万円とすれば、150万円の中古車と買うのと同じ金額で新車に乗ることが可能になるのです。4年後引き続き車が必要になったとしても、それまで乗っていた車を下取りに出して、社会人になってから少し奮発して自分が気に入った車に買い替える、という選択もできるでしょう。

また、新しい車に乗り続けたいという人も向いているといえます。3年ごとに「残価設定型自動車ローンを使って車を購入し、3年後に下取りに出して別の新車を購入」ということを繰り返せば、その後一切車検を受けずに月々同じ金額で新車に乗り続けることも可能だからです。

 

反対に、以下のような人は残価設定型自動車ローンの利用に向いているとはいえません

  • 同じ車に長期間乗ることを前提として購入する人
  • 走行距離の多い人
  • 最終回の選択肢として分割払いで残価を支払う可能性の高い人

月々の支払いが得になるからというだけで残価設定型自動車ローンを選ぶと、数年後損をする可能性があります。

たとえば独身男性がワンボックスカーを購入したとしましょう。月々できるだけ少ない負担で購入するため、月々の支払いが抑えられる残価設定型自動車ローンで5年間支払うことにしました。確かに同じ回数の均等ローンよりは月々の支払い額が抑えられますが、それは同時にその金額が現時点で無理のない支払い額であるということです。

男性は支払期間内である5年間で結婚、子供も誕生したため購入から5年後も引き続きワンボックスカーに乗り続けることにしました。ですが、結婚や出産でまとまった出費があったため、最終回は再分割を選びます。

この場合、残価部分には最初に残価設定型自動車ローンを選んだときと最終回の支払い方法に分割を選んだときの二重に金利がかかることになります。この方法を選ぶのであれば、初めから7年の均等ローンを組んだ方が総支払い額も月々の支払い額も抑えることができたのです。

欲しい車を月々できるだけ少ない負担で乗りたい、ということだけが残価設定型自動車ローンを選ぶ根拠になっている場合は、今後のライフステージや将来的なライフスタイルの変化などの長期的な目線も考慮に入れてみてください。数年後に乗り替える可能性や、車を手放す可能性があれば、下取り価格が保証されているメリットを受けられますが、そうでない場合は思わぬ損失になることがあります。

 

マイカーリースとの違いは?

残価という言葉を聞くと、「カーリースと同じじゃないの?」と思う方もいるかもしれません。

カーリースは月々の支払い額が残価設定型自動車ローンより多いですが、車検や税金の支払いなど一度に大きい出費はありません。残価設定型自動車ローンは月々の支払いは少ないが、車検や税金など大きい出費が都度あります。

カーリースは車検代や車に関する税金、メンテナンス代金などをリース代に含んでいるから月々の支払額が多いだけで、実際には合計の出費に大きな違いがあるわけではなく、支払いのタイミングが異なると考えてください。

また、法人でカーリースを使う場合はリース代を経費として申告できるなど、さらなるメリットがあります。

→ カーリースをご検討の方はぜひ「SmartDrive Cars」もご参照ください。

 

うまく利用すれば大きなメリットがあるのが「残価設定型自動車ローン」

ほかの自動車ローンとは全く特徴の違う残価設定型自動車ローン。仕組みが少々わかりづらいだけに、残念ながらインターネット上には正しいとは言えない情報もちらほらとあります。

残価設定型自動車ローンは、うまく利用すればほかのローンにはないメリットを受けられる魅力的なサービスです。ただしほかの自動車ローンに比べて条件は限られていますので、自分にとってメリットのあるものなのか、そうでないのか、ご自身の予算と将来の利用シーンに合わせてよく吟味してから選んでくださいね。

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